実家を相続した時の注意点について、引き続きご紹介します。
今回は相続放棄の活用の仕方について詳しく解説していきます。
債務を相続放棄するだけでなく、様々な活用方法があります。
相続放棄の活用の仕方
相続を開始した場合、相続人は、全ての財産を相続する「単純承認」プラスの財産(権利)の範囲内でマイナスの財産(債務)を相続する「限定承認」そしてプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しない「相続放棄」のいずれかを選択しなければなりません。
今回は、相続財産について、プラスの財産よりも債務の方が大きく、債務を承継しない目的で選択される「相続放棄」について、債務を承継しないという目的以外の活用の仕方を解説していきます。
まず相続放棄をするには、原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間)に、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄する旨の申述をします。
ちなみに相続放棄の年間受理件数は年々増加しており、直近のデータでは2021年(令和3年)では25万件を上回っています。
相続放棄の活用例
①次順位の人へ相続させたい場合
例えば、両親のうち、父親はすでに亡くなっていて、母親と子供2人のケースで考えて見ます。
この2人の子供のうち、1人はずっと独身だったとします。
その独身だった子供が母親よりも先に亡くなってしまうと、相続人は母親だけになります。
そして母親が亡くなると、子供のうち1人(生存している方)が相続人になるのですが、
母親の財産は、先に亡くなった子供の財産と、母親が所有している財産(先に亡くなっている父親の財産を含む)が合算されているため、税負担が重くなる可能性があります。
そのため、母親が相続放棄をして、次順位である、もう1人の兄弟を相続人にするというケースが考えられます。
こうすることにより、税負担が軽くなる可能性があります。 ただし、相続放棄により、兄弟が相続財産を取得する場合、相続税の2割加算の対象となるため、被相続人(亡くなった兄弟)と母親の財産状況によっては適当な方法ではないかもしれません。
②十分な生前贈与を受けていた場合
相続人が、生前に特別受益に該当する贈与を受けていた場合、被相続人の財産はそのことが原因で減っています。
そのため、相続時の財産に特別受益を加算(持戻し)をした上で、遺産分割協議を行うこととなります。
このような場合には、相続放棄をすれば評議の当事者ではなくなるため、生前に受けた贈与を遺産分割協議の場に持ち込まなくなるため、相続による財産取得を望まないのであれば、あえて相続放棄をすることで遺産分割争いを避けることができます。
③遺留分侵害額請求を受けたくない場合
相続人の最低限の権利である遺留分の計算には、被相続人が相続時に所有している財産だけでなく、相続人に対する相続開始10年間の特別受益に該当する贈与と、相続人以外の者に対する相続開始1年間の贈与が含まれます。
相続放棄をしなければ元々相続人であった者でも、相続放棄をすることにより相続人以外の者となるため、相続開始1年以内の贈与以外は遺留分を算定するための相続財産に含まれません。
ただし、贈与者(被相続人)と受贈者(相続放棄をする者)がともに、遺留分権利者(他の相続人)に損害を加えることを知ってした贈与については、贈与時期に関わらず遺留分を算定するための財産に含まれることには注意をしましょう。
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まとめ
このように、相続放棄には単に債務ばかりしかないから放棄する、という以外にも活用方法があります。
また、相続放棄をしても受け取れるものもありますし、放棄をすることで適用されないものなどもあります。 相続を放棄する可能性がある場合には、自分だけ考えずに専門家に相談しましょう。
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