「遺言書という言葉は聞いたことがあるが詳しく知らない。」
このような人向けに遺言書を書くか決める前に知っておくべきことを整理しました。
今回の記事で遺言書を作成するべきかどうかが明確になります。
遺言書で希望を伝える
終活の代表的なものの一つが遺言書の作成です。遺言書は自分の死後の財産をどのように分割したいかを民法の規定に従って記述する書面です。
ちなみに、エンディングノートは看取ってくれる人に向けて、自分の終末期や亡くなった後の希望を書いた書面です。法的効力はありませんが自由に思いを残すことが可能です。
遺言書がない場合
遺言書を残していない場合の財産の分配は、民法で定められた相続分(法定相続割合)に従って、法定相続人が遺産を分割して受け取ります。
遺言書を残す必要がある人
下記の項目に当てはまるものがある人は、相続人どうしでのトラブルを防止するために、遺言書を作成しておくとよいでしょう。
- 遺産を特定の相続人に多くあげたい
- 遺産を特定の人に残したくない
- 土地・家屋などの分割しにくい不動産が多い
- 子供がいない夫婦である
- 事実婚状態で入籍していないカップル
- 身寄りがなく、財産は友人やボランティア団体に寄付したい
遺言書には3種類ありますが、オススメはありますか?
遺言書には下記の3つの種類があります。
- 自筆証書遺言
自分で遺言書の全文、日付、氏名を自書し、押印します。
自由度の高いものになりますが、文書の形式に不備があると遺言書として認められない場合があります。 - 公正証書遺言
本人と承認2名で公証役場へ行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述します。法的に有効な遺言を確実に残せるのでこの遺言書がオススメです。
外出できない場合は、公証人に自宅まで出向いてもらうことも可能です。
また公正証書遺言は、基本手数料や遺言加算などの費用が掛かります。
基本手数料は、資産が100万円以下なら基本手数料は5,000円、1億円の場合には43,000円というように資産額によって変わってきます。 - 秘密証書遺言
公正証書と同じく公証役場で作成しますが、遺言内容は公証人にも知られることはありません。しかし、文書の形式に不備があると遺言書として認められないなどの理由から、あまり利用されていないのが現状です。
遺言書は書き直すことができますか?
遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回(書き直し)することができると、民法で規定されています。
もし、書き直した場合は、最も日付の新しい遺言書が有効とされます。
自筆証書遺言の場合は、古い遺言書を破棄し新しく書き直せば、費用をかけずに何度でも作り直すことが可能です。
しかし、書類に不備があると、無効にされますので注意が必要です。
公正証書の場合は、新たに公証役場で遺言書を作成する必要があります。申し出れば、公証人が新しい公正証書遺言に「古い公正証書による遺言は撤回し、新しく遺言する」と記載してくれます。
遺言は認知症になっても残せますか?
遺言書は、遺言能力さえあれば作成することができます。
遺言能力とは、自分の行う遺言の内容をきちんと理解し、判断する能力のことです。
作成する遺言書の種類は公正証書がオススメです。
本人が認知症の場合は、公証人から遺言能力があることを証明する書類の提出を求められます。
法律的には、「物事を理解する能力を一時的に回復したとき」で、医師2人以上の立ち合いが必要です。
自筆証書遺言書保管制度とはなんですか?
これは自分で作成した自筆証書遺言を法務局の本局や支局、出張所で保管してもらえる制度です。
自分で保管した場合に起こりかねない遺言書が見つからないケースや、相続人による遺言書の破棄、隠匿といった問題を防ぐことができます。
また、この制度を利用して申請をする時は、法務局の方で民法の定める自筆証書遺言の形式に適合しているか確認してから保管申請が受理されますので、書式の不備で遺言が無効になることはありません。
費用は申請時に3,900円かかるだけで月々の支払いなどは不要です。
そして、遺言書の確認は、本人が亡くなるまでは本人以外閲覧不可能です。
死亡した人の相続人、遺言書で受遺者と記載された人、遺言執行者として指定された人が閲覧請求することができます。
メリット
法務局に預けた自筆証書遺言は家庭裁判所での開封(検認)は不要というメリットがあります。
本人が亡くなった後に、相続人のうちの一人が遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付を受けた場合は、相続人全員に対し、遺言書保管所に自筆証書遺言が保管されている通知が届くようになっています。
デメリット
本人が入院などの理由で法務局に出向けない時に代理人を立てて申請することが不可能です。
この場合は、公証人に出張してもらい公正証書遺言を作成するか、自筆証書遺言を自分で保管することになります。
最後に遺言書についての注意点
相続が開始されると遺族は、相続財産だけでなく遺言書の調査も行います。
遺産分割後に遺言書が見つかった場合、遺産分割協議をやり直さなくてはならないケースもあります。
このような事態を避けるためにも、遺言書の有無、そして遺言書がある場合は保管場所を明記しておくことが重要です。
作成方法だけではなくて、保管、取り扱い方法も大切です。