身内で不幸が起きた時に形見とした何か物をもらっりしたことはありませんか?
実は形見のつもりで受け継いだ物の中でも相続税がかかる物もあればそうでない物もあります。
今回は動産に絞って相続についての理解を深めていきましょう。
動産とは何か?
動産とは、民法第86条第2項において、不動産以外の物はすべて動産とする旨の定めがなされています。
すなわち、動産とは「土地及びその定着物以外の物」となります。
定着物とは、建物や樹木等が該当します。
動産は財産評価基本通達において、一般動産、たな卸商品等、牛馬等、書画骨とう品、船舶に区分され、それぞれにおける評価方法が定められています。
動産の財産的な価値の評価について
一般的に動産の中には財産的な価値がない物も含まれます。
例えば、写真や服、日用品などで、こういった物は思い出の品ということで形見分けをすることが多いです。
形見分けは気持ちや感情が大きくかかわっているので親族間で揉めないためにも慎重に検討しなければなりませんが、基本的には財産的な評価は行いません。
しかし、財産的価値が高い動産については相続税が課せられる場合もありますので注意が必要です。
例えば、車やバイク、船などの大きい物や宝石や宝飾品、時計などの小さな物、骨董品、書画などの美術品などです。
これらは一般的に市場価値がつきやすいです。こういった物は、鑑定士などに依頼して価値を明確にし、相続時には相続税を納付しましょう。
一般動産とは
事業を営む者が所有し事業で使用する機械及び装置、器具、工具、備品、車両運搬具や一般家庭用の家具や衣服、非事業用の車両運搬具等がその代表的なものとなります。
また、一般動産の価額は、原則として1個又は1組ごとに評価することとされていますが、家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等などは、1個又は1組の価額が5万円以下のものに限り、一括して、1世帯、1農家、1旅館ごとに評価することが認められます。
一般動産の評価方法は、原則的には売買実例価額、精通者意見価格等を参酌することとなっています。
ただし、これにより評価することが困難な場合には、原価法(減価償却方法は定率法)により評価します。
調達価格が不明の場合には、再調達価格から経過年数による償却費合計額又は減価の額を控除して算出します。この場合の償却方法は定率法によります。
動産であっても、仏壇仏具や神具、その他の祭祀財産については課税されません。これらは国民感情上、課税することがなじまないと判断されるためです。
また、歴史的価値のある美術品などで相続税の申告期限(被相続人の死亡の翌日から起算して10ヶ月以内)に国や地方公共団体・特定の公益法人に寄付を済ませた財産も課税されない場合もあります。
このように、動産は一括して評価されたり、目的物の性質によって課税されなかったり、寄付により課税を免れるなど不動産とは異なり様々な特殊な扱いがされることとなります。
たな卸商品等
たな卸商品等とは、商品、製品、生産品などの動産のことです。
たな卸商品等の価額は、原則として商品、原材料、半製品及び仕掛品、製品及び生産品の区分に従って、それぞれの区分に掲げる動産のうち種類及び品質等がおおむね同一のものごとに評価します。
牛馬等
牛馬等とは、牛・馬・豚・羊等の家畜、鶏・あひる等の家きん、鯉等の養魚等のことです。
牛馬等については、次の区分により、それぞれ評価します。
- 牛馬等の販売業者が販売目的で所有していたもの
たな卸商品等と同様に評価します。すなわち、相続発生時における販売価額から、次の金額の合計額を控除した金額によって評価することとなります。
・販売業者に含まれる適正利潤の額
・相続発生後販売までに負担すると認められる経費の額(予定経費額)
・その商品についての消費税及び地方消費税の額 - 上記①以外のもの
ペットであれば売買実例価額、精通者意見価格等を参照して評価します。
書画骨とう品
書画骨とう品については、次の以下の区分によりそれぞれ評価します。
- 書画骨とう品の販売業者が所有していたもの
たな卸商品等と同様に評価します。相続の発生時での販売価格から、以下の金額の合計額を控除した金額です。
・販売業者の得る適正利潤の額
・相続発生後販売までに負担する経費(予定経費額)
・商品に対しての消費税及び地方消費税 - 上記①以外のもの
販売業者が所有していたもの以外は、売買実例価額、精通者意見価格等を参照して評価します。
また、高値のつかない骨とう品である場合は、一般動産として評価を行います。
この場合は、家庭用財産として一括評価で申告することが一般的です。
船舶
船舶については、原則として売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価します。
ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない船舶については、その船舶と同種同型の船舶を相続発生時において新造する場合の価額から、その船舶の建造の時から相続発生時までの期間に応ずる償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価します。
また、償却費と減価の金額は、課税時期の属する年の1月1日における耐用年数省令に規定する耐用年数等に基づき定率法によって計算した金額とします。
また、製造時から相続発生時までの期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とします。
注意すること
動産を遺産分割する際、誰が取得するかという問題があります。遺産を共有しようとしても実際は難しく、通常であれば誰かが単独取得することになります。
また、物があったとしても相続人が引き渡さず、鑑定ができないという場合もあり得ます。
動産の評価額は、社会経済の状態や鑑定業者、鑑定物の状態などによって変動しますので評価自体が非常に困難です。
使用していない動産で高値が付きそうな物は、現金に変えて遺産分割した方がトラブル回避にもなりオススメかもしれません。